何らかの病気によって入院加療となった動物が退院する時、獣医師がオーナーに退院した後の注意点を説明するコミュニケーションが生まれる。そこで問題になることが、如何にして注意点を理解してもらい、且つ、実践してもらうかという点である。無論、全てを理解して実践して欲しいと獣医師は願うだろう。しかし、そう上手く事は運ばない。どれ程に平易な言葉を用いたとしても、「全て」というのは難しいだろう。では、何が理解してもらいにくいことなのか。それを把握し、インフォームド・コンセントに活かすことが重要である。
冒頭のような背景の中、ドイツの大学らは、神経疾患で入院加療となった犬猫のオーナーと、その治療に携わった獣医師にアンケートを依頼し、退院時における獣医師の説明とオーナーの認識を調べる研究を行った。なお、同研究では、①退院時と②退院から2週間後にオーナー230名に説明内容を問うアンケート(年齢、性別、学歴を含む)を依頼しており、獣医師も説明内容が問われるアンケート(年齢、性別、臨床経験年数、専門医資格を含む)に回答している。すると、①の時点で対象となったオーナーの約66%、②の時点で約30%から回答を得て、以下に示す事項が明らかになったという。
◆神経疾患で入院した犬猫の退院時における獣医師の説明とオーナーの認識◆
・①の時点での回答の一致率は約69%であった
・②の時点では約67%であった
・①の時点で一致率は低かった
・最も一致率が低かった事項は薬剤の副作用であった(29%)
・次いで後遺症(約36%)、ケージレストの指示に関すること(約37%)であった
・一致率を低下させるファクターは「オーナーの年齢のみ」であった
・特に50歳以上のオーナーで一致率は低下した
これを受け、大学らは『オーナーは説明を部分的にしか理解できない』と述べる。また、『説明内容の中の重要事項は強調するべきだ』と訴える。よって、回答一致率がとりわけ低い薬剤の副作用、後遺症、ケージレストなどを中心に、重要事項を必ず理解してもらう説明を獣医師個々人、あるいは、病院単位で考案して頂けると有難い。

オーナー用のアンケートでは、獣医師から説明を受けた時の感情についても聴取しているとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38700383/


