1歳にも満たない若い犬の皮膚に腫瘤が認められた。年齢から察するに腫瘍の可能性は低いだろうか。それとも、悪性腫瘍の場合もあるだろうか。そして、検査の必要性は・・・。おそらく、このような判断に迫られる若い獣医師は少なくないものと推察される。無論、上級獣医師に相談をすれば、明確な回答が返ってくることもあるだろう。また、論文を探せば、判断を下しやすい材料を得られるかも知れない。そこで、本稿では、後者の論文を一つ紹介したい。王立獣医科大学らが発表した論文だ。
同大学らは、生後0~12ヶ月齢で、且つ、過去7年間(2006~2013年)に皮膚腫瘤と診断された若い犬を対象にして、彼らの組織病理学的検査の所見を解析した。すると、2500件以上のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆若齢の犬の皮膚に発生する腫瘤性病変の疫学◆
・2400件を超える約94%の組織サンプルが腫瘍性であった
・それらの殆どが良性であった(2300件以上)
・良性腫瘍の94%は独立円形細胞であった
・最も一般的な所見は組織球種であった(全体の約87%)
・その他に一般的なものは乳頭腫、類皮嚢胞、毛包嚢腫、肥満細胞腫であった
・組織球種(オッズ比約1.7倍)と肥満細胞腫(約2.2倍)はオスで発生しやすかった
・また両腫瘍は四肢に生じやすい傾向があった
・ボクサーが類皮嚢胞および毛包嚢腫の約25%を占めていた
・非腫瘍性病変(130件余り)の約94%は上皮由来であった
上記のことから、若い犬(子犬)の皮膚腫瘤では、組織球種が最も一般的であることが分かる。また、その殆どが良性である。そして、組織球種の多くは、自然に退縮する特徴を持っている。よって、若い犬の皮膚腫瘤を診察する獣医師におかれては、慌てることなく細胞診を実施した上で、数週間の経過観察を行うことが良いのではないかと思われる。

腹部の皮膚腫瘤では、類皮嚢胞と毛包嚢腫が一般的だということも分かっております。
参考ページ:
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jsap.13418


