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パルボウイルスの感染で腸炎を起こした犬と甲状腺ホルモンの変動を観察した研究

投稿者:武井 昭紘

甲状腺ホルモンは、自らを分泌する臓器(甲状腺)の機能に異常がなくとも、様々な疾患(病状)に呼応するように「その分泌量」が低下することがある。つまり、甲状腺ホルモンの血液中濃度は、ある疾患の転帰・予後と連動していると捉えることができるのだ。では実際のところ、両者の関係性はどうなっているのか。疾患一つひとつをとって具体視していくことが、獣医学の抱える課題となっている。

 

そのような背景の中、欧米の獣医科大学らは、少なくとも5日間の入院加療となったパルボウイルス性腸炎(canine parvoviral enteritis CPVE)の犬28匹を対象にして、彼らの転帰・予後と、血液中の甲状腺ホルモン(TT4、fT4)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度との関係性を調べる研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆CPVEを罹患した犬と甲状腺ホルモン◆
・入院初日では全ての症例でホルモン濃度が低かった
・またその割合は3日目で約70%、5日目で約82%となった
・約40%の症例が少なくとも1日間SIRSと診断されている
・生存する症例では初日と比べて5日目のTT4が有意に高かった
・亡くなる症例と比べて生存する症例では5日目のTT4が有意に高かった
・SIRSと診断された症例と比べてSIRSを起こしていない症例ではTT4およびfT4が有意に高かった

 

上記のことから、入院5日目のTT4が高い症例はCPVEから回復することに加えて、SIRS(全身性炎症反応症候群)に陥った症例では甲状腺ホルモンが低下することが分かる。よって、今後、甲状腺ホルモンの濃度を上昇させる治療法を開発する研究が進められるとともに、SIRSを予防することによって生存確率が上昇するかについて検証されていくことに期待している。

甲状腺ホルモンの測定値は、リンク先の論文にてご確認下さい。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34252549/


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