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ラブラドール・レトリバーにおけるNT-proBNPの参照値を見つめ直した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の心臓への負荷、あるいは、心臓病の病態を把握するための有用なバイオマーカーとして、血漿中NT-proBNP濃度(NT-proBNP)の測定というものがある。この項目は、非常に利便性高く、動物検査会社IDEXXの設定している基準値を参考にすると、例えば、心雑音のみが聴取できる犬でNT-proBNPが≧900 pmol/Lを示せば、臨床的に重要な心臓病が生じている可能性があり、心雑音と心臓病を疑う臨床症状を伴う犬でNT-proBNPが>1800 pmol/Lを示せば、心不全に陥って症状を発現している可能性が高いと判断することができる。しかし、一方で、「犬」と一括りに出来ないケースも存在しており、心臓病に罹患しやすいドーベルマン・ピンシャーにおいて、NT-proBNPが≧735 pmol / Lを示せば、拡張型心筋症に罹患している可能性が高くなるのである。つまり、NT-proBNPは、品種ごとに基準値を設ける必要があると言えるのだ。

 

そこで、イギリスの大学および動物病院らは、ラブラドール・レトリバーを対象にして、NT-proBNPの基準値を再考する研究を行った。なお、同研究では、臨床上健康な個体と拡張型心筋症例のNT-proBNPが比較されており、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆ラブラドール・レトリバーにおけるNT-proBNP測定結果◆
・測定結果から品種固有の基準値は、275-2100 pmol/Lと設定できる
・臨床上健康な個体の93%は、この基準値の範囲内に収まる
・拡張型心筋症例の個体の82%は、基準値を超える数値を示す

 

上記のことから、前述したIDEXXの基準値を用いて、ラブラドール・レトリバーのNT-proBNPを判断すると、過大評価になってしまうことが窺える。よって、今後、本研究のデータを基に、心臓病(特に拡張型心筋症)を患ったラブラドール・レトリバーを特定できるNT-proBNPの基準値が再考され、広く普及していくことに期待している。

NT-proBNPの基準値上限を2100 pmol/Lにすると、拡張型心筋症の陽性適中率は90%、陰性適中率は87%だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32297329


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