頚部から尾に至るまで整然と並ぶ椎骨と椎骨の間にクッションのように点在している組織である椎間板は、時折、本来の位置から飛び出して、その背部にある脊髄を圧迫し、椎間板ヘルニアを起こす。また、当該疾患は、程度の差こそあれ、「圧迫」に伴う神経症状を呈することがあるため、この「圧迫」を解除するために外科手術を適応することが、標準的な治療の一つとして広く知られている。しかし、①症状が発現するタイミングと、②その発現から手術を実施するタイミングの間に、術後経過を左右するファクターが存在していると言われており、①と②が離れるほど、手術成績が思わしなくない結果となるともされているのだ。
そのような背景の中、カンザス州立大学は、2年間(2016年1月~2017年12月)で片側椎弓切除術を受けた椎間板ヘルニアの犬130匹以上を対象に、①および②、そして、術後経過に纏わるデータを解析する研究を行った。すると、①から②までに要した時間は、術後の経過(消失した感覚の回復、尿失禁・歩様の改善)と相関していないことが明らかになったとのことである。
上記のことから、手術を検討(決心)する時期が①から離れてしまった症例において、診断または判断が「遅れた」ことを理由に、外科的治療を除外する必要は無いものと思われる。よって、愛犬の椎間板ヘルニアの発症に動揺をしているオーナーには、治療方針を「ゆっくり」と考えてもらうことが、精神衛生上、望ましいのではないだろうか。

本研究では、術前の神経学的検査の結果は手術成績と相関していることが判明しております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32000274


