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猫の注射部位肉腫に対する化学療法剤として期待感が持てるNF-κB阻害剤の有用性

投稿者:武井 昭紘

ノーベル生理学医学賞の受賞経験のあるDavid Baltimoreらによって、1986年に発見された核内因子NF-κB(nuclear factor-kappa B)は、人医療において、細胞死(アポトーシス)を抑制することで細胞を生存させる効果を発揮し、腫瘍組織の形成に大きく関与している転写因子として知られている。そのため、NF-κBの作用を阻害する薬剤(NF-κB阻害剤)は、腫瘍細胞をアポトーシスへと誘導し、病変の増大を抑えるように働くことが期待されているのである。

前述のような背景の中、台湾の大学ら(国立台湾大学、国立中興大学)は、猫の注射部位肉腫(Feline injection sites sarcomas、FISS)におけるNF-κBの発現と当該疾患におけるNF-κB阻害剤デヒドロキシメチルエポキシキノミシン(DHMEQ)の有用性を検証する研究を行った。なお、同研究では、40匹を超えるFISS症例から得られたサンプルを用いた病理組織学検査でNF-κBの有無が、また、FISS症例から選抜された3例より得られた腫瘍組織を用いた細胞培養でDHMEQの有用性が検証されている。その結果、同大学らによると、80%以上の症例でNF-κBの発現が認められ、DHMEQによる細胞増殖およびコロニー形成の抑制が観察されたとのことである。

このことから、NF-κB阻害剤DHMEQは、FISSに適応できる化学療法剤として有用だと考えられる。よって、今後、FISSに苦しむ猫を救うべく、DHMEQを実症例に使用する臨床試験が実施され、用法・用量と有害事象への対応がガイドライン化されていくことを願っている。

今回紹介した研究における細胞培養では、DHMEQは、用量依存性に効果を強める性質を持っていることが確認されたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31653220


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