動物虐待と犬の行動学に纏わる一説によると、標準よりも痩せた犬は、常に食べ物が不足している(飢餓に陥るリスクが高い)状態に曝された結果として、食物に対する執着が強くなり、ペットフードを与えられたタイミングでヒトへの攻撃行動(食物関連性攻撃行動)をとることが増えるという。つまり、非常に心が痛むことなのだが、これが真実ならば、「食べ物を与えない」という壮絶な虐待を経験した犬たちは、それに起因した攻撃行動がもとで里親を見つけることが困難となり、更なる不遇を味わうことになると考えられるのだ。
これは、獣医師の立場から見ても、純粋な動物好きの人間として見ても、大変に由々しき問題(現代社会の闇)だと感じるのは、何も筆者だけに限らないのではないだろうかーーーーー。
そのような背景の中、アメリカ動物虐待防止協会(American Society for the Prevention of Cruelty to Animals、ASPCA)は、冒頭に記した「悲しい仮説」の真偽を突き止める行動学的研究を行った。なお、同研究では、立件された虐待事件で保護された900匹にも昇る犬を対象にして、体型と食物関連性攻撃行動との繋がりの有無が検証されており、実に幸いなことにと添えるが、両者の間に有意な関係性は認められなかったという結論が得られたとのことである。
上記のことから、「痩せた犬は食べ物に執着して攻撃的になる」といった説は、否定的であることが示されたと思われる。よって、今後も、やっとの想いで虐待から逃れた犬たちが不幸のスパイラルに巻き込まれないように、間違った先入観(一説)を打ち消す研究が盛んに実施されることを願っている。

今回紹介した研究では、母集団(900匹)の約9%に食物関連性攻撃行動が認められたとのことです。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31783499


