ニュース

消化器に対する外科手術後の術創の裂開を生じさせるリスクファクターに関する研究

投稿者:武井 昭紘

異物の誤飲、ヘルニアによる絞扼、腫瘍などを治療するために適応される消化器外科の術式では全般的に、消化管内容物が腹腔内へと漏れ出さないように、術創の裂開を何としても回避することが求められる。そのため、消化管を吻合(縫合)する方法が慎重に検討され、閉腹前の術創の確認が重要視されることは、獣医学部生および新人の獣医師を含めて多くの先生方が、ご存知のことと思う。しかし、いくら術者が心に留めていても、この裂開リスクを0(ゼロ)にすることは難しく、手技的な問題とは全く異なる何らかの「未知の」ファクターが関与している疑いが、現代の獣医療をもってしても完全に否定できない。

そこで、アメリカ合衆国を中心に大規模な動物病院組織を結成するVCAグループは、胃または腸に外科手術を施された犬170件のデータを解析し、術創が裂開する危険因子を探る研究を行った。すると、ASA (American Society of Anesthesiologists)分類にてクラスIII以上の数値を示す個体は、クラスII以下の個体の約18倍、術創の裂開が起きやすいことが明らかになったとのことである。

上記のことから、ASA分類による評価は、消化器外科における術後の経過を予測できる指標の一つとして有用だと考えられる。よって、ASA分類が高い犬の胃や腸にアプローチする外科手術を検討する場合には、術創の裂開に対する細心の注意を払い、その旨をオーナーにインフォームド・コンセントすることが重要なのではないだろうか。

同研究では、各症例の血漿中乳酸濃度についても分析されており、この濃度が高い個体の生存率は低下することも分かっています。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31429652


コメントする