犬の乳腺腫瘍は、予防接種などの身体検査で見つかることもあり、ペットオーナーが気が付かずに進行している場合もある。そのため、外科手術の難易度が高い症例や転移を起こしているケースも珍しくない。この際には、手術で取り切れなかった腫瘍組織や画像診断で認識できない転移病巣への対応を目的とした再発チェックや予後・治療効果判定などが重要となる。しかし、術後または化学療法の経過観察中に、上記の事項をモニタリングできるマーカーは確立されていない。
そこで、インドの大学(Guru Angad Dev Veterinary and Animal Sciences University)は、腫瘍組織と正常組織の相違点を検証して、犬の乳腺腫瘍の予後および治療効果を判定するマーカーの特定を試みた。初めに、同大学は、腫瘍組織が有するヒートショックプロテインであるHSP90に属するグルコース調節タンパク質94(Glucose-regulated protein 94、Grp94)に着目して、犬の正常乳腺組織と乳腺腫瘍組織におけるHsp90B1遺伝子(Grp94をコードしている)の発現、血清中Grp94濃度測定(健康犬と乳腺腫瘍症例)を実施した。
すると、正常乳腺組織に比較して、乳腺腫瘍組織では3.5倍のHsp90B1遺伝子が過剰発現していることが明らかとなった。さらに、健康犬に比して、担癌症例では血清中Grp94濃度が有意上昇していることも判明している。
このことから、研究を行った大学は、Grp94が犬の乳腺腫瘍のマーカーとして有用であり、予後および治療効果判定に利用できる可能性があると考察している。今後、研究が進められ、血清中Grp94濃度が臨床応用されるようになれば、犬の乳腺腫瘍における「診断~治療効果判定まで」のモニタリングを担えるマーカーが確立されるかも知れない。

今回紹介したマーカーは、健康診断で実施される血液検査に導入できるようになると理想的かも知れません。
参考ページ:
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11010-017-3152-4


