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イギリスで拡大する犬の致死性寄生虫感染症に関するバイエル社の啓蒙活動

投稿者:武井 昭紘

以前から、イングランド南部およびウェールズ地方(イギリス)では、Angiostrongylus vasorum(体長約2.5cmの住血線虫)が犬に感染することが知られている。加えて、近年になって、イングランド北部、スコットランド、ミッドランド(アイルランド)にも、上記の住血線虫感染症が確認されるようになり、A. vasorumの分布域が拡大していることが懸念されている。このことに関して、王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)は、イギリスの獣医師の20%(5人に1人)が罹患犬を1例以上経験するまでに深刻化していると試算を出しているとともに、ブリストル大学が、イギリス全土の「キツネ」におけるA. vasorumの感染率は7年間(2008~2015年)で2倍以上(7.3%→18.3%)に増大しているという発表も行われた。

仮に、A. vasorumが犬に感染すると、虫体(病原体)が心臓や肺動脈に寄生して、発咳、易疲労性、体重減少、食欲不振、嘔吐、下痢、発作、出血傾向などを起こして、無治療では致死的経過を辿ることになる

そこで、製薬メーカーであるバイエル社は、Act Against Lungwormというサイトを立ち上げて、A. vasorum感染症を予防する対策方法を啓蒙している。同サイトは、今年2月から公開されており、現在までに80例以上の感染例が獣医師から寄せられており、その過半数にあたる40例以上は、過去にもA. vasorumに感染していることが判明した。また、Act Against Lungwormには、A. vasorumの感染経路から講じることができる予防対策(以下に示す通りである)をペットオーナーに呼びかけるページも用意されている。

A. vasorum感染症の予防対策◆

1.A. vasorumを媒介するカタツムリまたはナメクジが屋外にある犬のオモチャや飲み水に接触する可能性があることを考える(オモチャは毎日洗浄、飲み水は毎日入れ換える)。
2.小型のカタツムリまたはナメクジが草や虫に付いていることを考えて、不必要な草・虫の摂食を辞めさせる。
3.感染した犬の尿にA. vasorumが排出されるため、感染した犬と健康な犬を同一空間で飼育しない。
4.キツネがA. vasorumを保有していることがあるため、キツネの生息域への立ち入りを避ける。
5.駆虫薬(ADVOCATE®)による毎月の予防を検討する。

上記のことから、販売用の犬や一般家庭で飼育されている犬(日本への移住)が、イギリスから日本へ輸入される場合には、A. vasorumの感染の有無を確認する検疫が必要となってくるかも知れない。そして、日本に定着する多くの外来種が社会問題となっていることも考慮すると、A. vasorumを媒介するカタツムリやナメクジが日本で繁殖していないかを調査することも重要であると考えられる(在来種が病原体を媒介する可能性も検証できると理想的である)。

移動手段および物流システムが発達している現代では、遠く離れた地域の感染症が、瞬く間に日本で拡大する可能性があるので、防疫対策をシュミレートすることは大切かも知れません。

移動手段および物流システムが発達している現代では、遠く離れた地域の感染症が、瞬く間に日本で拡大する可能性があるので、防疫対策をシュミレートすることは大切だと思います。

 

参考ページ:

https://www.lungworm.co.uk/learn-about-lungworm/


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