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心筋細胞を分裂させる効果を発揮して心筋リモデリングを阻止する細胞外因子

投稿者:武井 昭紘

ヒトおよび動物が心疾患に罹患すると、心機能(収縮能・拡張能)の低下に伴う全身循環の悪化が生じて、最終的には心筋組織の線維化(リモデリング)へと繋がる。前述した一連の現象は、「更なる」心機能の低下を続発して、病態を進行させる悪循環に陥る引き金となってしまう。そのため、心筋リモデリングを抑制する治療法(心筋細胞の数を増やすことで線維芽細胞の増殖・線維組織の増加を阻止する治療法)を開発することが、人医療および獣医療の課題となっている。

そこで、イスラエルのワイツマン科学研究所とアメリカのデューク大学、ベイラー大学などが共同で、心筋組織を再生する因子の検出と作用に関する研究を行っており、「新生児マウスの心筋細胞が有する分裂・増殖能」に着目している(心筋幹細胞を除いて、心筋細胞は増殖しにくいとされている)。また、今回の研究では、新生児マウスの心筋細胞が特別なのではなく、細胞外マトリックス(心筋細胞を取り巻く環境)に重要な役割があるという仮説を基にしていることが、特徴的(印象的)である。

同研究の結果、新生児マウスの心組織からアグリンという物質の検出に成功したとのことである。さらに、in vitroにおいて、iPS細胞由来の心筋細胞(マウス、ヒト)に対する組み換え型アグリンの効果が検証されており、細胞分裂を促進する作用を発揮することが明らかとなった。加えて、in vivoにおいて、心筋梗塞を起こした心筋組織(成体マウス)に組み換え型アグリンを注入すると、心筋組織が再生されることが確認されてる。

上記のことから、アグリンによる心筋細胞の増殖作用(心組織の再生効果)を臨床応用できる技術へと発展させることができれば、循環器系疾患の治療に立ちはだかる大きな壁(心筋リモデリング)を乗り越えることができるかも知れない。今後、犬猫の心疾患におけるアグリンの有効性に関する研究が行われて、アグリンによる「心筋リモデリング抑制療法」が確立されることに期待したい。

今回の研究をキッカケとして、「心筋細胞は増殖できない・しづらい」という概念を改めて、「分裂・増殖をサポートする因子があれば心筋細胞は増える」という視点に切り換えることが、今後の獣医療(人医療も同様)には必要になってくるのではないでしょうか。

今回の研究をキッカケとして、「心筋細胞は増殖できない・しづらい」という概念を改めて、「分裂・増殖をサポートする因子があれば心筋細胞は増える」という視点に切り換えることが、今後の獣医療(人医療も同様)には必要になってくるのではないでしょうか。

 

参考ページ:

https://www.nature.com/nature/journal/vaap/ncurrent/full/nature22978.html


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