臭化カリウムは、フェノバルビタールでコントロールのできない特発性てんかんの治療薬として、1世紀以上に渡り使用されている薬剤である。また、臭化カリウムは、獣医療の分野だけではなく、人医療でも使われる一般的な薬として知られている。しかし、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)は臭化カリウムを承認していないという現状がある。
2016年10月、FDAのホームページにアップされた記事によると、承認されていない理由が以下である。
・各製薬メーカーが抗てんかん薬の治療薬として臭化カリウムの有効性および安全性をFDAに提示したことがない。
・品質基準を満たした臭化カリウムを生成できることを証明した製薬メーカーがない。
FDAは、臭化カリウムが薬剤として承認をうけることで、より安全に獣医療で使用し続けていけると考えている。そこで、記事を書いた著者は、臭化カリウムの安全性に関する111の研究データを参考にして、臭化カリウムの有害事象(副作用)への対策をまとめている。これをキッカケとして、各製薬メーカーが臭化カリウムの安全性に関するデータを集積し、FDAに提示することを期待していると考えられる。
<臭化カリウムの副作用と対策>
・神経系に影響を与えることによる鎮静・運動失調・行動の変化
これらの現象は可逆的であり、生理食塩水の静脈点滴、フェノバルビタールの減量により数日以内に改善する。
・消化器症状(嘔吐・下痢・血便)
消化器症状が出たとしても臭化カリウムの投与中止をする必要はなく、フードと一緒に薬剤を投与することで症状は軽減する。
・食欲の変化
食欲不振または多食症を認めることがあるため、臭化カリウムを投与しているペットの食事パターンの変化および体重の推移には注意を払う。
・膵炎
臭化カリウムの投与により膵炎を発症することがある。しかし、記事を書いた著者は、臭化カリウムの膵炎のリスクが高いとは考えておらず、多食症(ゴミの摂食など)により膵炎が起こるとしている。そのため、食欲のチェックが膵炎のリスクを大きく低下させることが推察できる。
・甲状腺
臭化カリウムを投与することによる甲状腺機能の変化について検討した文献が少ないため、甲状腺ホルモンのモニタリングを推奨している。
・皮膚病変
臭化カリウムの副作用としては稀で、報告されている症状は鱗屑、痒み、膿疱である。参考ページの記事には対処方法は記載されていないため、臭化カリウムとの関連があるかについて研究が進むことを期待したい。
上記の注意点に気をつけることで、臭化カリウムはより安全な治療薬として使用できると考えられる。今後、各製薬メーカーまたは研究機関が臭化カリウムの安全性について研究を行い、FDAが承認するようになれば、てんかんの治療としての臭化カリウムの安全性が確固たるものになると思われる。

安全性が高い薬剤が増えることは、ペットおよびペットオーナーに安心や精度の高い医療を提供する上で重要であると思います。
参考ページ:
http://www.fda.gov/animalveterinary/resourcesforyou/ucm301671.htm


