犬の口腔疾患は、臨床現場で比較的多く遭遇するものである。疾患の種類は多様で、歯周病(歯垢、歯石、歯肉炎など)のような診断が容易なものから、腫瘤のような鑑別・診断を慎重に行わなければならないものまで知られている。そこで、今回は、口腔内腫瘤の中でも周辺性歯原性線維腫(線維腫性エプリスおよび骨形成性エプリス)に焦点を当てて、他の腫瘤との鑑別も含めて記載したい。
<外観>
周辺性歯原性線維腫は、外観の観察によって、線維肉腫との鑑別が可能となる(最終的に生検で裏付けを取ることは重要である)。線維肉腫は無茎性で歯肉や口腔粘膜(舌を含む)との境界が不明瞭な状態で腫脹(びまん性)を伴って発生するのに対し、周辺性歯原性線維腫は有茎性で一つの歯芽を中心として発生しているように見える。
<X線検査>
X線検査においては、エナメル上皮腫との鑑別が可能となる。エナメル上皮腫は顎骨への浸潤および骨吸収が認められるのに対し、周辺性歯原性線維腫は骨組織への影響をみられない。ただし、骨形成性エプリスでは腫瘤内の石灰化と歯根の吸収を観察することができる。
<手術>
周辺性歯原性線維腫では、腫瘤を切除するとともに、周囲の歯肉縁に合わせて、患部を整えることが理想的である。また、腫瘤が発生した歯芽を抜歯することが再発予防になると考えられている。しかし、機能歯(上顎の第4前臼歯と下顎の第1後臼歯)に周辺性歯原性線維腫が発生した場合は、必ずしも抜歯を行う必要はないとされている。
上記のように口腔内の1つの腫瘍をとってみても、慎重に鑑別を行う必要がある。さらに、エプリス(または周辺性歯原性線維腫)の分類は、今後も変更される可能性がある。そのため、「現時点で適切な治療」というのも変化していくかも知れないので、最新の獣医療を来院患者に提供していくために、研究機関と臨床現場の連携が重要であると考えれる。

ポイントを押さえて、短時間に効率良く診察を進められると、鑑別で悩む時間も減るかも知れません。
参考ページ:
http://www.veterinarypracticenews.com/why-epulides-merit-attention/


