何らの理由で鎮静や麻酔をかけられる動物には、多かれ少なかれ死のリスクが付き纏う。このリスクは病気の程度が重い症例ではさることながら、健康な個体にも付き纏う。つまり、不妊・去勢手術にもリスクはあるのだ。そこで、疑問が浮かぶ。鎮静や麻酔が死へと繋がる要因とは一体、何であろうか。「病気があること」だけでは説明の付かない要因を突き止めることは、より安全な鎮静・麻酔を実現する上で重要なことである。
冒頭のような背景の中、カナダの大学らは、国内の検査センターに提出された犬猫の遺体の剖検結果と、彼らの臨床病理学的データを解析する研究を行った。なお、同研究では、検査センターに全身(体の全て)が提出されており、且つ、鎮静・麻酔から7日以内に死亡した症例を対象にしている。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆鎮静・麻酔に関連して死亡した犬猫の特徴◆
・425件の死亡例を解析した(①)
・①のうち約55%は犬、約45%は猫であった
・死亡例は2016年〜2021年にかけて増加傾向にあった
・①のうち94%で何らかの病歴が確認できた(②)
・しかし②のうち約40%で病歴に関する情報が不完全であった
・①のうち安楽死の措置が講じられた症例は15%以下であった
・①のうち60%以上が麻酔の前後6時間以内に死亡した
・犬では麻酔中に死亡する例が多かった
・猫では麻酔後6時間以内に死亡する例が多かった
・①において最も多かった麻酔を掛けた理由は不妊・去勢手術であった(約43%、③)
・③のうち約93%のASA分類(麻酔リスク)はIまたはIIと低かった
・①の約74%で肉眼的および組織学的な病理検査所見が揃っていた(④)
・④の約40%のみで死因が特定できた
上記のことから、麻酔・鎮静に関連した死亡例の大部分を不妊・去勢手術が占めているとともに、これらの手術に臨んだ犬猫の麻酔リスクは低いことが窺える。また、病理検査を実施した症例で死因が特定できる可能性は50%にも満たないことも分かる。よって、今後、不妊・去勢手術に関連した犬猫の死亡リスクを軽減する方法、そして、麻酔・鎮静に関連して亡くなった犬猫の死因を特定する方法について議論され、獣医学における麻酔管理および不妊・去勢手術の安全性が向上することを期待している。

本研究で解析された病理検査データには89名の病理医が関与しており、彼らの検査室に提出された検査依頼の約4%を麻酔・鎮静に関連した死亡例が占めていたとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39494188/


