マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction、MGD)は、犬に見られる眼科疾患で、涙の油層を構成する物質を分泌するマイボーム腺の機能が低下する病的現象として知られている。また、当該疾患は、シルマーティアテストなどの眼科検査で診断されていることが一般的となっている。そこで、疑問が浮かぶ。眼球はさることながら、眼周囲も多種多様な組織が集まって構成されている。つまり、その多くの組織に纏わるデータ(測定値)も数多く存在しているのだ。ならば、その測定値を眼科疾患の診断・治療に活かすことはできないものなのだろうか。
冒頭のような背景の中、韓国のソウル大学校は、眼瞼の縁の厚さ(eyelid margin thickness、LMT)に着目して、犬のMGDを分析する研究を行った。なお、同研究では、スリットランプも用いてLMTを測定し、赤外線を用いて非侵襲的にマイボーム腺の構造を評価している。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆MGDを抱える犬のLMT◆
・臨床上健康な犬(1.00±0.13mm)に比べてMGDの犬のLMT(1.18±0.19mm)は有意に大きかった
・LMTは12歳齢以上の犬で厚くなっていた(1.25±0.20mm)
・LMTはマイボーム腺の欠損レベルと正の相関関係にあった
・「LMTが1.20mm以上であること」はマイボーム腺が3分の1以上欠損していることを予測するマーカーとなっていた
・LMTが非常に厚いグループ(1.26mm以上)ではマイボーム腺の構造的異常の割合も高かった
上記のことから、「LMTが厚くなること」はMGDの発症に関与していることが示唆された。よって、今後、LMTが厚くなることを予防する、あるいは、治療する方法、即ちマイボーム腺の欠損を防ぐ、あるいは、欠損したマイボーム腺を回復させる方法について議論され、MGDに対する診療レベルが向上することを期待している。

「LMTが1.20mm以上であること」を基準にすると、感度64.%、特異度76.8%でMGDが診断できるとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39963084/


