2週間に渡る排尿困難を主訴に、11歳の犬(雑種)がイタリアの動物病院を訪れた。すると、原因を探るべく行われた身体検査にて、包皮(皮下)が腫脹していることが判明した。また、画像診断にて陰茎に腫瘤が発生していること、その腫瘤が尿道を圧迫していることが分かった。それは、カテーテルが外尿道口から膀胱へ全く挿入できない程の狭窄に繋がっていた。更に悪いことに、陰茎骨の融解が認められた。悪性腫瘍が頭の中に過る所見だった。果たして、彼の身に何が起こったのだろうか。
超音波ガイド下による細胞診では、確証が得られなかった。そのため、病理組織検査が実施された。診断は血管肉腫だった。陰茎の切除と尿路の変更を(陰嚢へ尿道を造設)する手術が施された。そして、補助的に化学療法(サリドマイド、ドキソルビシン)が始まった。診断から235日目、皮膚と大網に転移病巣が見付かった。間髪を入れず、骨と肺にも転移が生じた。296日目、安楽死の決断が下された。
症例を発表したイタリアの動物病院らは、陰茎に発生した血管肉腫を抱える犬の生存期間は手術と化学療法で延長できると述べる一方で、当該疾患は他の場所に発生する血管肉腫と同様の悪性度を有すると訴える。極めて稀な病態ではあるが、万が一、類似する症例に遭遇した獣医師は、オーナーと治療方針について良く話し合って頂けると幸いである。

本症例は、陰茎の血管肉腫として世界で5例目だとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39156797/


