エンドセリン-1という物質は、血管を収縮させるとともに血管平滑筋を増殖させる作用を有しており、肺高血圧症を抱えるヒトの肺動脈における病変の形成に関与していると言われている。そこで、疑問が浮かぶ。僧帽弁閉鎖不全症の犬において、肺高血圧症は一般的な症状である。ならば、彼らの体内でもエンドセリン-1は暗躍しているのではないだろうか。
冒頭のような背景の中、タイのチュラロンコン大学は、①臨床上健康な犬、②僧帽弁閉鎖不全症の犬、③僧帽弁閉鎖不全症に肺高血圧症を併発した犬から肺組織を採取し、肺動脈におけるエンドセリン-1およびエンドセリンA受容体の発現を調べる研究を行った。また、①~③の犬の血液中に含まれるエンドセリン-1の濃度を測定した。すると、以下に示す事項が明らかになったという。
◆僧帽弁閉鎖不全症の犬におけるエンドセリン-1の働き◆
・①~③で肺動脈におけるエンドセリン-1およびエンドセリンA受容体の発現に差異は無かった
・エンドセリン-1およびエンドセリンA受容体の発現と肺動脈の厚さに相関関係は無かった
・血液中のエンドセリン-1濃度にも差異は無かった
・血中濃度と心エコー図検査所見に相関関係は無かった
上記のことから、エンドセリン-1は犬の僧帽弁閉鎖不全症の病態に関与していない可能性が示唆された。よって、今後、エンドセリン-1の発現や濃度に大きな変動がある罹患犬の有無を調べる大規模な臨床研究が進み、僧帽弁閉鎖不全症の犬におけるエンドセリン-1の働きが最終的に決定されることを期待している。

肺組織(肺動脈)サンプルは20匹の犬(①5匹、②8匹、③7匹)、血液サンプルは61匹の犬(①22匹、②20匹、③19匹)から採取されております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39507783/


