ニュース

潜在精巣の犬に適応した術式と重篤な合併症の関連性を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

潜在精巣はその名の通り、通常であれば陰嚢に下降する精巣が腹腔の何処かに隠れている現象のことである。そのため、この精巣を取り出し去勢手術を完了するためには、開腹手術をする必要があるのだ。つまり、一般的な去勢手術よりも潜在精巣の手術は合併症のリスクが高いと考えられるのである。では実際のところ、そのリスクとはどれ程のものなのだろうか。また、リスクは術式によって変動するのだろうか。

 

冒頭のような背景の中、VCAおよびバンフィールドというアメリカの大規模な動物病院グループらは、過去5年間(2018年~2022年)において潜在精巣に対する手術を受けた犬の診療記録を対象にして、術式と合併症に関するデータを纏める研究を行った。なお、同研究では、猫、鼠径部の潜在精巣、腫瘍化した潜在精巣、合併症の情報が欠如している症例は除外されている。また、術式は切開部位に焦点を当てており、皮膚切開の方法にて皮膚正中切開、傍正中切開(正中線の外側)、傍包皮切開、離れた2ヶ所の切開、切開方法不明、腹壁の切開方法にて腹部正中切開、傍正中切開、離れた2ヶ所の切開、切開方法不明を区別している。すると、200匹以上のデータが集積され、以下に示す事項が明らかになったという。

◆潜在精巣の犬に適応した術式と重篤な合併症◆
・約19%の症例で合併症が発生した
・最も多い合併症は前立腺の外傷であった
・次いで消化器症状と尿路の外傷が続いた
・傍包皮切開に比べて傍正中切開では約4倍、合併症が起きやすかった
・腹部正中切開に比べて傍正中切開では3.4倍、合併症が起きやすかった
・傍包皮切開と腹部正中切開によって合併症のリスクは減少した

 

上記のことから、包皮の外側を皮膚切開し、そこから白線にアプローチすることで合併症リスクが軽減されることが分かる。よって、潜在精巣に対する術式を決めかねている獣医師は、本研究が提唱する術式を試してみることをお薦めする。

動物病院らは、傍包皮切開と腹部正中切開の組み合わせによって臓器の露出と視認性が向上すると述べています。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39305925/


コメントする