猫が患う心筋症は、病態が進行すると症状が悪化して致死的経過を辿る。そこで、疑問が浮かぶ。心筋症ではあるものの臨床症状が認められない症例は、どれ程の死亡リスクを負っているのだろうか。仮にリスクが高いのであれば、早期診断・早期治療を議論しなければならないため、これは重要な課題である。
冒頭のような背景の中、イギリスとニュージーランドの大学らは、ニュージーランドで暮らす純血種ではない猫を対象にして、無症状の心筋症の有病率と心疾患に関連した死亡率を算出する研究を行った。なお、同研究では新生仔と妊娠個体を除外しており、左室後壁の厚さが6mm以上(拡張期)の場合を心筋症と定義している。すると、130匹以上の診療記録、同じく130匹以上の剖検結果が集積され、以下に示す事項が明らかになったという。
◆猫における無症状の心筋症の有病率と心疾患に関連した死亡率◆
・平均年齢は4.1歳であった(3~8歳)
・24%の猫で心雑音が確認された
・2%の猫で不整脈が検出された
・18%の猫(24匹)で超音波検査において心臓病が見付かった(96%が①肥大型心筋症、4%が拘束型心筋症)
・①のうち13%で全身性高血圧症や甲状腺機能亢進症が発覚した
・剖検をされた猫の②約5%(7匹)の死因が心臓病であった
・②のうち5匹が肥大型心筋症(③)、1匹が先天性心疾患(④)、1匹が心筋炎(⑤)であった
・③のうちの3匹と④は臨床症状を発現しないままで突然死した
・③のうちの2匹と⑤はうっ血性心不全に陥って死亡した
・心臓に異常が認められた猫の約94%は心疾患以外の死因で亡くなった
上記のことから、例え心臓に異常(肥大型心筋症が多くを占める)が見付かったとしても、必ずしも「それ」が死因とはならないことが窺える。よって、臨床症状が伴わない猫の肥大型心筋症の診察では、過度にオーナーの心配を煽ることは避け、定期的な健康診断を薦めることが望ましいと思われる。

死亡した猫のデータは、2012年2月~2022年2月の間において取得されております。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39343434/


