2歳齢のボストン・テリアが、分娩の兆候から72時間経過しても出産が終わらないという主訴でアメリカの動物病院を訪れた。どうやら、8匹の胎児は無事に生まれ、残念ながら最後の1匹は死産だったらしい。念のため、レントゲン検査で腹部を観察する。もう胎児は居ないと判断された。しかし、その一方で腹水が確認された。そして、本症例は循環血液量減少性ショックに陥ってしまった。果たして、彼女の身に何が起こったのだろうか。
腹水が採取された。カリウムの値は、血中濃度の1.8倍に達していた。逆行性造影で膀胱の状態をチェックする。造影剤は腹腔内に広がった。膀胱破裂に伴う尿腹症が疑われた。左方移動、単球を主体にした白血球増加症、高窒素血症(中程度)、高ビリルビン血症(軽度)、ALP上昇(軽度)、低Na血症(中程度)、低Cl血症(中程度)。血液検査には多くの異常が認められた。
静脈輸液でショック状態から回復。敗血症性腹膜炎を危惧されて抗生剤療法の適応。開腹術に臨んだ。レントゲン検査を裏付ける腹水とともに、肥大した子宮と破裂した膀胱がそこにあった。卵巣子宮全摘出術と膀胱の修復が行われた。術後5日目、彼女は無事退院した。後の病理組織学的検査で、膀胱には腫瘍も膀胱炎も結石症も起きていなかったことが判明した。その代わりと言うべきか、膀胱壁には浮腫、うっ血、出血が生じていた。
症例を発表したアメリカの大学および動物病院らは、難産に関連して膀胱破裂と尿腹症を呈した犬の報告は初めてだと述べる。もしも仮に、読者の皆様が担当する難産の犬に腹水が認められた場合、鑑別疾患に膀胱破裂を追加して頂けると有難い。

腹水と子宮内の液体を用いて細菌培養をした結果、Staphylococcus pseudintermediusとエンテロコッカス属の細菌が検出されました。幸い、アモキシシリン/クラブラン酸およびエンロフロキサシンに感受性があったとのことです。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39185780/


