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犬の前庭疾患の疫学を調べたヨーロッパの研究

投稿者:武井 昭紘

犬の前庭疾患は、Old Dog Syndrome(特発性)、中耳炎(末梢性)、中枢神経系(中枢性)のトラブルなどを原因として起きるもので、この3者を鑑別することが重要とされている病気である。しかし、その鑑別には、MRIやCT検査に加えて脳脊髄液検査までも実施する必要があるのが現状なのだ。つまり、オーナーの金銭的負担(経済状況)を踏まえると、当該疾患は、誰しもが「鑑別の流れ」に乗ることができない病気だと言えるのである。

 

そこで、ヨーロッパの獣医科大学らは、前庭疾患を有する犬230匹以上の診療記録を基に、一次診療施設で得られて、且つ、前述した3者を推定できる臨床所見を特定する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったという。

◆前庭疾患を鑑別する臨床所見◆
・95%の症例は8種類の疾患のいずれかであった
・その8種類とは、特発性、中耳炎、髄膜脳炎(原因不明)、脳腫瘍、梗塞、頭蓋内の化膿性炎、メトロニダゾール中毒、中耳の腫瘍である
・「臨床症状が改善すること」、病的な眼振、顔面神経麻痺、「ホルネル症候群が認められないこと」は特発性という診断に関連している
・ホルネル症候群、「外耳炎の病歴があること」は中耳炎という診断に関連している
・頭部の傾き、「顔面神経麻痺とホルネル症候群以外の脳神経障害」は脳腫瘍という診断に関連している
・「急性での発症」、「斜視が認められないこと」は梗塞という診断に関連している
・「外耳炎の病歴がないこと」は、特発性または髄膜脳炎(原因不明)という診断に関連している
・末梢性の疑いは特発性と中耳炎、中枢性の疑いは梗塞と脳腫瘍という診断に関連している

 

上記のことから、臨床所見から前庭疾患を「ある程度」鑑別できることが窺える。よって、今回紹介した研究結果がリスト化されることを期待するとともに、そのリストが、諸般の事情により精査ができない前庭疾患の犬の診療を向上するツールとなることを願っている。

「高齢であること」や「体重が重いこと」も、特発性という診断に関連しているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33739504/


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