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犬のインスリノーマに関する疫学を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

インスリノーマは、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が腫瘍化したもので、低血糖に伴う発作を罹患犬に齎す疾患である。また、当該疾患は、無治療または内科療法(外科手術で腫瘍を摘出する方法以外)では、1年前後と短期間のうちに亡くなってしまう病気として知られている。そこで、一つの疑問が浮かぶ。インスリンの過剰分泌による低血糖、発作などの神経症状、病態の悪化(転移など)、一体どれが最も生存期間を短くするのだろうか。それを明らかにすることは、犬のインスリノーマをより深く理解することに寄与するものと思われる。

 

そのような背景の中、ヨーロッパの獣医科大学らは、100例を超えるインスリノーマに罹患した犬の診療記録を対象にして、全生存期間を左右する因子を特定する研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したという。

◆インスリノーマに罹患した犬の全生存期間を左右する因子◆
・約60%の症例に虚弱、約34%に「てんかん」発作、約28%に意識や行動の変化が起きた
・神経学的検査における異常所見としては、約28%に抑うつ、約22%の引っ込め反射の低下、約19%に威嚇瞬き反応の消失が認められた
・内科療法を受けた個体(8ヶ月)の全生存期間は、外科手術を受けた個体(20ヶ月)よりも有意に短かった
・転移がある症例の全生存期間は、「治療法に関係なく」短くなった
・神経学的検査の異常所見は予後と相関していない

 

上記のことから、治療法の選択と転移の有無が全生存期間を大きく左右していることが窺える。よって、当該疾患を疑う症例に遭遇した場合には、転移病巣を探索する精査を実施しつつ、外科手術を第一に検討することが望ましいと言える。また、今後、外科手術を避けたいと望むオーナーらのために、全生存期間を延長する内科療法が考案されていくことを願っている。

症状の発現から動物病院を受診するまでの期間は、1.5か月(中央値)だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33724496/


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