近年、小動物臨床におけるフィラリア予防は変わりつつある。犬に薬剤を飲ませたり注射するのではなく、忌避剤を使い、あるいは、蚊の個体数を減らすことで、犬が蚊に刺されない環境を整備することが最新のフィラリア予防だと考えられるようになってきたのだ。では、そのために、どのような科学技術が必要なのだろうか。それを探求することが、獣医学の課題となっている。
前述のような背景の中、アメリカ獣医師会は、ある研究をホームページ上に公開した。なお、同会によると、フロリダで感染症を媒介する蚊の数を制御する活動をしているFlorida Keys Mosquito Control Districtが、バイオテクノロジー事業を展開する企業と協力して、蚊の個体数を減少させる遺伝子組み換え技術を開発したとのことである。具体的には、子孫を殺す遺伝子を持つオスの蚊を環境中に放してメス(野生の個体)と交配させることで、何世代にも渡って彼らの数を減らすことが可能だという。そして実際、ブラジルにおける試験(2年間)では、ある地域に分布する蚊を96%削減することに成功したそうだ。
この結果を受け、フロリダ大学に所属する感染症学者は述べる。
『同技術は、犬がフィラリアに感染するリスクを減らすだろう』と。
世界から蚊が居なくなれば、フィラリア症は発生しない。
これ以上のフィラリア予防はあるだろうか。
よって、今後、本稿で紹介した遺伝子組み換え技術が世界的に発展していくことに期待している。
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