一次診療施設でも頻繁に実施される犬の腎臓の超音波検査では、主に、腎臓の構造、腎皮質のエコー源性(renal cortical echogenicity、RCE)、結石・嚢胞・腫瘤性病変の有無がチェックされる。そのうち、腎臓の機能的異常を類推するRCEは、肝臓や脾臓のエコー源性と比較されて、正常か異常かを判定されることが一般的である。しかし、この「比較」は、エコー源性、つまり、色の濃淡を指標にしていることから、検査を行っている獣医師の主観が強く反映されており、客観性に欠けるという特徴を有してしまっている。
そこで、ソウル大学校は、RCEの評価に客観性を持たせるために、腎皮質と髄質を区別する境界の見え方を指標に用いて、SDMA値とクレアチニン値で算出した推定の糸球体濾過率(estimated glomerular filtration rate、eGFR)が低下した慢性腎臓病(chronic kidney disease、CKD)の犬と、腎機能が正常な犬をグルーピングする研究を行った。なお、ここで言う「見え方」とは、以下の3通りである。
◆腎皮質と髄質を区別する境界によるグルーピング◆
①グレード1:腎皮質と髄質の境界が明瞭
②グレード2:腎皮質と髄質の境界が曖昧
③グレード3:腎皮質と髄質の境界が分からない
すると、RCEのグレードが上がるにつれ、各グループ内におけるCKDを罹患した犬の割合が増加していくことが明らかになったとのことである。
上記のことから、本研究のRCEは、犬のCKDを疑う指標として優れていることが窺える。よって、今後、前述したグルーピングを行うAIが開発され、客観性の高い腎臓の超音波検査(RCEのチェック)が普及していくことを期待している。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32735096/