近年、犬猫の循環器診療では、NT-proBNPを始めとする重症度や予後を判定するためのバイオマーカーが、いくつか開発・商業化されており、一次診療施設でも頻用されるほどに広く普及している。しかし、いずれの心疾患バイオマーカーもスクリーニングに用いるためのエビデンスに乏しく、ごく初期の心疾患を検知できるか否かについては、不明な点が多いのが現状と言える。
そこで、ミャンマーに近いタイ北部に位置するチェンマイ大学は、酸化ストレスやアポトーシスから脳および心臓組織を守るヒューマニン(Humanin、HN)と呼ばれるポリペプチドに着目して、僧帽弁疾患(mitral valve disease、MVD)を罹患した犬における血漿中濃度の変動を観察する研究を行った。なお、同大学によると、血漿中HN濃度は、クラス1から4へとステージが上がるごとに低下していく特徴を有し、NT-proBNPに比較して軽度のMVDを認識することに優れているとのことである。
上記のことから推察すると、血漿中HN濃度は、心筋組織のリモデリングを評価できるマーカーとして有用であるかも知れない。よって、今後、神経系疾患における血漿中HN濃度の変動も調査され、循環器および神経系疾患の鑑別方法が確立していくことに期待したい。
参考ページ: