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出血性ショックに陥る個体が抱えるリスクファクターを解析した研究

投稿者:武井 昭紘

外傷、下痢症などに伴う急性の出血を生じた動物は、全身への血液循環が悪化することに伴う出血性ショックを起こす場合があり、生死を彷徨う危険な状態に陥ってしまう。故に、動物病院にて救急疾患としての対応を要することになるのだが、急性出血の全例がショック症状を発現する訳ではなく、何らかの因子が病態(ケースバイケース)を決定していると推察できる。

そこで、ミネソタ大学は、組織酸素分圧(tissue hemoglobin oxygen saturation、StO2)に着目して、急性出血を認めた犬における出血性ショックの有無を解析した。すると、出血性ショックに陥る個体のStO2は、ショックを起こさない個体よりも有意に低い値を示しており、カットオフ値は87.6%であることが明らかとなった。

上記のことから、StO2は、出血性ショックに陥りやすい個体を認識するための有用な指標となり得るかも知れない。よって、今後、体腔内外を問わず血管外へ血液が失われるリスクを伴う疾患(一例:脾臓の血管肉腫)を抱えているペットを対象に、StO2と出血性ショックの発生率との関連が検証され、ショック症状を事前に予測できるモニタリング法が確立されることに期待したい。

組織酸素分圧を高めると出血性ショックを起こした症例を救えるとしたら、人工血液(赤血球)の開発・臨床応用で救命率が大幅に上がるのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30117666


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