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犬の肛門周囲腺腫の経過モニタリングに有用なマーカーに関する研究

投稿者:武井 昭紘

犬の肛門周囲腺腫は、中年齢以上に発生する皮脂腺が腫瘍化した疾患で、病理学的には①肝様腺腫(Hepatoid gland adenoma、良性)と②肝様腺上皮腫(Hepatoid gland epithelioma、悪性)に大別される。また、治療法としては、化学療法や外科手術(去勢手術ないしは病変部位の切除)が適応されるのだが、再発するケースも認められるため、診療経過のモニタリングに利用できるマーカーの確立は大変有意義であると思われる。

そこで、ポーランドのルブリン大学は、抗癌剤タモキシフェンの投与を受けた肛門周囲腺腫の犬における血清中上皮成長因子濃度(epidermal growth factor、EGF)について調査を行った。すると、以下に示す事項が判明したとのことである。

◆犬の肛門周囲腺腫とEGFの関連性◆
・健康な個体と比べて罹患犬でEGFが有意に上昇する
・①では治療開始後にEGFが減少する
・②では治療開始後にEGFが増加する
・②は再発例でもEGFが増加する

上記のことより、EGFは、肛門周囲腺腫の経過を追跡できる有用なマーカーとなり得ると考えられる。また、肛門周囲腺腫(特に化学療法剤で再発してしまう今回の症例に類似したEGFの変動をみせる個体)に対する外科手術の適応とEGFについても検証が進み、経済的に理由により化学療法と外科手術のうちから二者一択となった場合の治療方針決定マーカーとしても、EGFが応用できるようになることを願っている。

健康な個体における去勢手術の前後でもEGFの数値が変化するのかについても研究を進めると、肛門周囲腺腫の発生予防のヒントなど、新たな発見があるのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30150441


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