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犬の肝疾患の有無を確定させる新しい肝特異的血液検査の開発

投稿者:武井 昭紘

通常、一般の動物病院で実施される血液性化学検査の結果は、保定や採血手技といった人為的な要因を除いて、客観性が保たれた数値で表示されるのだが、複数の項目におけるアップダウンを問診や他の検査所見と合わせて総合的に判断するためには、学生時代に習得する獣医学的知識とは別に、一定の臨床経験を要する場合が多い。

特に、肝・腎パネルに属する項目の大部分は、単一の臓器の状態だけを反映している訳ではないとともに、成長段階などのライフステージ、食餌などの飼育環境、事故などの外的要因の影響も受けるため、非常に複雑な変動をみせる。故に、前述の「総合的判断」に関しては、経験の浅い獣医師およびペットオーナーにとって、客観性に乏しい印象を受けてしまうポイントになり得ると言える。

そこで、イギリス(スコットランド)のエジンバラ大学は、人医療にて肝特異的マーカーとして知られる血液中miR-122濃度(miR-122)に着目して、肝臓に起因する疾患を有する犬との関連性を検証した。なお、同検証では、ラブラドール・レトリーバーやコッカースパニエルを含む250匹の犬が対象となり、肝疾患を持つ個体で有意にmiR-122が上昇していることが明らかとなっている。

上記のことから、一般的な血液検査で肝疾患を「疑う」症例に遭遇した際には、多種多様な要因を考えながら、肝生検などの時間・医療費・動物へのストレスがかかる「肝臓の精査」を行う前に、肝疾患の確定ないしは除外診断法(血液中miR-122濃度測定)が適応できる未来が訪れることを期待できるのではないだろうか。

単一の項目であるmiR-122が上昇していると、肝疾患が確定できるとなれば、非常にシンプルかつ客観的に、今後の診療方針に関してインフォームドコンセントができると思います。

 

 

参考ページ:

https://www.ed.ac.uk/news/2018/dogs-to-benefit-from-test-to-spot-liver-disease


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