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犬の筋ジストロフィーに対する治療法の確立に近づいたゲノム編集技術

投稿者:武井 昭紘

遺伝病に属する大部分の疾患は、生後に早期発見されたとしても、根治を望める治療法が確立されていない場合が珍しくなく、致死的経過に抗うことが非常に難しいという現状がある。その一例として、ゴールデン・レトリーバーなどに起きるディシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy、DMD)が挙げられ、生まれて間もなく筋肉の萎縮に伴う様々な症状(呼吸困難、心不全など)が発現してしまう。

しかし、今年の8月末に、DMDを治せるかも知れない手法がサイエンスに発表された。なお、同発表によると、別の記事にて紹介したことがあるゲノム編集技術CRISPR(参照1:腫瘍細胞の増殖抑制、参照2:FIVに対する遺伝子治療)をDMDの犬に適応して、心臓や横隔膜の筋肉組織に欠損しているはずのジストフィンを産生させることに成功したとのことである。

上記のことから、以前にアップしたベクターによる治療法(マイクロジストロフィンの産生)とは異なるアプローチにて、遺伝子のトラブルによって失っている生体の機能や構成成分を「編集する」という医療分野が確立できるかも知れない。よって、CRISPRが、小動物臨床における遺伝性疾患の概念を大きく変貌させる未来が訪れることを切に願っている。

ディシェンヌ型筋ジストロフィーは、遺伝子治療によって根治できる疾患であるという概念が、近い将来の新常識となるかも知れません。

 

参考ページ:

http://science.sciencemag.org/content/361/6405/835


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