フィラリアの大動脈寄生、口腔内の皮脂腺腫など、日々、世界各地から小動物臨床「初」の症例が報告されており、流通している獣医学の成書に記載された疾患には分類できない病態が数多く存在していることが窺える。そのため、既存の類症鑑別の概念とは全く異なるアプローチで、先入観を無くして、症例を見つめ直すような発想をするトレーニングも臨床現場に携わる獣医師には必要であると思われる。そこで、今回も世界初の猫の血液性疾患を紹介したい。
カリフォルニア大学の発表によると、雑種猫(4歳齢、雄)が持続性の鼻出血で来院したのだが、CBCでは異常所見が認められず、炎症部位の存在も疑えなかったとのことである。その後、検査入院となり、血小板の遺伝子発現を解析したところ、血小板凝集に関与するインテグリンと呼ばれるタンパク質の欠損が確認され、グランツマン血小板無力症(Glanzmann thrombasthenia、GT)と診断された。
なお、GTに対する有効な治療法は確立されておらず、対症療法のみとなってしまうため、前述の個体は日常的な出血リスクに付き纏われるはずだったのだが、ある漢方薬によって良好な経過を辿っているとのことで、このポイントも含めて世界初の症例報告となった。
上記のことより、原因不明の鼻出血を抱える猫を担当している獣医師は、同大学のレアケースを参考にされると良いのかも知れない。
参考ページ:
https://www.vetmed.ucdavis.edu/news/uc-davis-veterinarian-discovers-rare-blood-disorder-cat