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犬インフルエンザウイルスの進化を辿った研究と今後の防疫対策の方向性

投稿者:武井 昭紘

インフルエンザウイルスは進化のスピードが非常に速く、その要因の一つとして、生体内で「再集合」という現象を起こすことが挙げられる。つまり、全くの新しいウイルスに生まれ変わるということだ。故に、前述の再集合が生じる動物を一種ずつであっても丁寧に特定していくことが、防疫対策や流行株(ワクチンを作製するべき株)の予測に有用な情報を提供するはずである。

そこで、マウントサイナイ医科大学(アメリカ)および広西大学(中国)らは、中国南部に位置する広西チワン族自治区で暮らす犬からインフルエンザウイルス(canine influenza viruses、CIV)を検出して、遺伝子解析を用いて、進化の過程を追跡した。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆自治区内におけるCIVの進化◆
①2種類のH1N1型が豚から犬へ感染
②①はアメリカ、ユーラシア、中国の多様な株の遺伝子を引き継いでいる
③①が犬の体内で3種類の新しいウイルス(H1N1r、H1N2r、H3N2r)が生み出されていた
*r:再集合して生じた株

上記のことから、犬に複数のインフルエンザウイルスが同時に感染すると、再集合が起き、未知のウイルスが誕生する可能性があることが推測できる。よって、ヒトおよび動物の命を守る予防法の確立を目指すのであれば、世界各地で飼育されている犬を対象に、同様の現象(再集合)が認められるかについて検証することが望ましいのかも知れない。

インフルエンザウイルスは、猫にも感染することが報告されております。はたして、猫の体内で再集合は起きるのか。屋外で暮らす猫が多い日本にとって、重要な問題です。

 

参考ページ:

http://mbio.asm.org/content/9/3/e00909-18


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