栄養学をテーマにした成書には、「猫はタンパク質要求量が非常に高い動物」と記したものがあり、食餌中に含まれる理想的なタンパク質の割合は40~50%とも言われている。しかし、陳列されたフードのパッケージから組成を読み取れば明白なように、前述の数値を満たしていない市販食・療法食は多い。つまり、この事実は、ペットの健康維持を目的とした栄養学の全容が解明されていないことを示唆していると言える。
そこで、オレゴン州立大学と大手ペットフードメーカーのヒルズ社は、組成が異なる4種類のフードを用意して、健康な犬猫の「嗜好性から視た栄養学と代謝」に着目して検証を行い、以下の結果を得た。
◆組成で区分された4つのフード◆
①高タンパク食
②高脂肪食
③高炭水化物食
④①~③のバランスを取ったフード
◆犬猫44匹が選んだフードと代謝の相違点◆
・犬はエネルギー源として②を好む
・猫はエネルギー源として③を好む
・高齢猫に比べて、若く、痩せた猫の方が、タンパク質を消費する
・若く、痩せた犬に比べて、過体重の犬の方が、タンパク質を消費する
このことから、犬猫ともに、標準体型ではない個体において、タンパク質要求量が高まっていることが窺える。
本研究を考慮すると、健康維持をゴールと設定した場合、既存のペットの栄養学では、「理想的な食餌管理」に辿りつけないのかも知れない。よって、今後、本研究をモデルにして、生物学や動物行動学を積極的に採り入れた新たな栄養学が確立されていくことを期待している。
参考ページ:
http://jeb.biologists.org/content/early/2018/05/16/jeb.173450