獣医学の成書に記載してある疫学の中には、現時点での実状を反映していないものも少なくなく、既存の文面を基に、防疫対策を講じることが難しい地域が世界各地に点在している。故に、最新データを①効率良く入手するとともに、②同時に数多くの感染症を調査する手法の開発が、日常的かつ迅速な疫学アップデートの実現に繋がり、防疫の基盤を強化し得ると考えられる。
そこで、バングラディシュ農業大学と北海道大学は、バングラディッシュ国内に居る犬から血液を採取して、セルフリーDNA(cell-free DNA、cfDNA)に含まれる寄生虫の遺伝子検出を試みた。なお、cfDNAとは、血液中を循環する「細胞外に出たDNA」で、腫瘍細胞や胎児の先天性疾患の評価に有用であると期待されている。
また、同大学らによると、14匹分のサンプルから増幅した数千万のDNA配列を解析した結果、バベシア、リーシュマニア、フィラリアなどの小動物臨床における主要な寄生虫の遺伝子を発見したとのことである。
上記のことから、特定の地域に侵入してしまった新たな病原体の洗い出しのために、cfDNAの配列決定を利用すれば、既存の疫学で知られていない感染症の有無を明確化(可視化)することができるのではないだろうか。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29860031