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ウサギの致死性ハエウジ症blowfly strikeの疫学を明らかにしたビッグデータ

投稿者:武井 昭紘

ウサギのblowfly strike(クロバエストライク)は、ヒトや動物に起きるハエウジ症とは様相が異なり、心拍数の上昇、体温低下、貧血を呈したのち、ショック状態に陥る致死性疾患である。また、英国の動物病院の約95%が、少なくとも1回はblowfly strikeを診察しているとの報告(2005年5~9月)が上がっており、決して稀な病気とは言えないことが推察できる。しかし、当該疾患の発症要因の全容は明らかになっておらず、安定した予防策を講じることが難しい現状がある。

そこで、リバプール大学は、400弱の動物病院が保管する3年間分の電子カルテから、blowfly strikeに着目して、40000匹を超えるウサギのデータを集積した(以下に概要を示す)。

◆イギリスにおけるblowfly strikeの疫学◆
・全体の0.6%(約250匹)が発症し、その約半数が致死的経過を辿る
・地域的な流行は認められない
・発症のピークは夏
・約5~18℃の外気温において、1℃上昇する度に発症リスクが30%アップする
・ウジが発生する患部は会陰部に集中する
・未避妊メスで約3倍、5歳齢以上で約4倍の発症リスクを抱える

上記のようなblowfly strikeを起こすクロバエ科の主要な昆虫はヒロズキンバエ(Lucilia sericata)と呼ばれ、日本のイチゴ栽培での受粉を助けるセイヨウミツバチの代わりに導入することが検討されている種でもある。よって、本国でblowfly strikeが多発する可能性が否定できないため、農業分野と獣医療の各組織が協力して、ウサギに対する福祉と向き合う未来となることを願っている。

今回明らかにされた疫学を基にして、予防対策ガイドラインの作成が進むことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29653739


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