ニュース

ヒトおよび犬の先天性眼科疾患の発症メカニズムを解明するキッカケとなる研究

投稿者:武井 昭紘

ヒトにおける眼科疾患の一つに、MAC(microphthalmia:小眼球症、anophthalmia:無眼球症、coloboma:ブドウ膜欠損症)が挙げられる。また、このMACは、①ビタミンAの不足または②遺伝子変異によって発症するとされているが、病態の全容解明には至っておらず、課題は残されたままだと言える。

そこで、フィンランドとアメリカの大学は、MACに類似した眼のトラブルを抱えるアイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリア(Irish soft-coated wheaten terrier、ISCWT)に着目して、250匹を超える個体のDNA配列を分析した。すると、血縁関係で繋がる4家系に眼科疾患が頻発していることが判明し、レチノール結合タンパク質(RBP)4の遺伝子変異の特定に成功した。なお、遺伝子欠失に伴い、RBP4タンパク質は3次元構造の維持が困難となり、レチノールを運搬する能力を著しく低下させてしまうとのことである。

上記のことから、①②のどちらかではなく、②に起因して①が生じ、MACを発症するというメカニズムが想定できる。加えて、ビタミンAを発育途中(胎仔)の眼にデリバリーする治療法を開発すれば、MACやISCWTの眼のトラブルを解決できるようになるのではないだろうか。

ブリーディングの制限とは異なるアプローチで、遺伝子変異を伴う疾患の治療法を確立するキッカケとして期待できる研究が、数多く報告されていくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(18)30718-6


コメントする