狂犬病は、発症すると100%死亡する危険な感染症で、毎年、推計50000人が犠牲となっている。故に、国境を越えたグローバルな防疫を推進することが望ましく、①狂犬病予防対策が確立していない国や地域へのプログラムの導入を、②予防先進国が協力して支援していくことが重要である。ただし、①の時点で、プログラムの有用性をイメージしてもらえなければ、前述の概念は机上の空論となってしまう。
そこで、②の代表格、アメリカ(疾病予防管理センター、CDC)は、東アフリカを対象として、人口100万人(都市部:農村部=2:1)あたりの防疫プログラムの費用対効果を算出した。なお、同検証には、専用計算ツールRabiesEconを用いており、以下のような結果が得られている。
◆プログラムと費用対効果の比較◆
・プログラムなし(費用なし)
10年間で約50000匹の犬が狂犬病ウイルスに感染し、3000人が犠牲になる
・プログラム1(毎年50%の犬にワクチン接種)
a.低感染リスク:10年間で感染犬は97%減少
b.高感染リスク:10年間で感染犬は75%減少
c.費用対効果:救われる命は1800人前後(1つの人命あたり418ドルの経費)
・プログラム2(半年ごとに20%の犬にワクチン接種)
a.低感染リスク:10年間で感染犬は94%減少
b.高感染リスク:10年間で感染犬は78%減少
c.費用対効果:救われる命は約2000人(1つの人命あたり355ドルの経費)
上記のことから、高い客観性とともに、費用対効果が明示されていると考えられる。加えて、将来的に、RabiesEconが5大陸全ての①に適用されれば、無数のヒトおよび動物の命を継続的に救える狂犬病予防プログラムが実現するかも知れない。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29791440
注:
低感染リスク:1匹の狂犬病ウイルス感染犬から1.2匹に拡大
高感染リスク:1匹の狂犬病ウイルス感染犬から1.7匹に拡大