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犬の門脈-体循環シャントにおける術後経過と肝組織の遺伝子発現の関連を示した研究

投稿者:武井 昭紘

犬の門脈-体循環シャント(congenital portosystemic shunt、CPSS)では、門脈系と体循環の血管分布に異常をきたすことに伴って、解毒できないままの老廃物が体内に蓄積し、神経症状を呈する場合があるため、諸条件を満たしていれば、外科手術(CPSSの原因となっている血管の結紮など)が望ましいと考えられている。しかし、麻酔リスクを差し引いたとしても、手術の成功は100%保証されているものではなく、現在の獣医療では全容解明の出来ていない未知のファクターにて、①術後に回復する個体と②回復しない個体に分かれてしまう現状がある。

そこで、ユトレヒト大学、ウィーン大学らは、血漿中アルブミン濃度および肝組織に発現している遺伝子に着目して、①②の相違点を検証した。すると、アルブミンと3つの遺伝子発現の計4点における高低の2段階評価(数学で習う組み合わせで計算できる16通り)に応じて、術後の経過が決定していることが示唆される結果となった。

よって、上記を基にして大規模な臨床研究を行い、統計学的データを集積することは、治療成績を事前に把握する手段の開発のために大変、有意義だと思われる。また、「術前」に遺伝子治療を実施することで、②を①へ導けるかについても明らかにされることを期待したい。

研究と技術開発が進めば、遺伝子の発現を調整して、治療成功率を最大値まで引き上げた状況で、外科手術に臨める未来が訪れるかも知れません。

 

参考ページ:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jvim.15140


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