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外科手術を回避した猫の「予防医学的」不妊プログラムの確立を目指した研究

投稿者:武井 昭紘

オーナーが居ない、または、フリーローミング(放し飼い)の猫は、感染症の蔓延や環境汚染(排泄物の臭気、回収前のゴミの散乱)などの公衆衛生上のトラブルを増大させてしまうリスクとなることがあり、過剰な繁殖を人為的にコントロールせざるを得ないとされている。しかし、屋外で生活し、日々増減と移動を繰り返す猫全頭に不妊・去勢手術を施すことは非現実的で、外科的なプログラムとは異なるアプローチの開発が重要と考えられる。

そこで、フランスおよびアメリカの大学らは、野生動物を不妊するワクチン(GonaCon™)を猫に応用する研究を行った。なお、同研究で用いたワクチンは、性腺刺激ホルモン放出ホルモンに対する抗体を作る効果が有し、ネズミ、ブタ(野生)、シカなどの不妊に用いられている。大学らによると、GonaCon™は、接種した猫の30%において1年以内の妊娠を回避させるとともに、接種後に妊娠した個体の受胎までの期間を延長することができるとのことであるが、一方で、当該ワクチンの不妊作用について改善の余地が残されているとも結論付けている。

上記のことから、GonaCon™をベースに、猫に特化したワクチンが開発されれば、公衆衛生学的な社会問題を解決するだけではなく、大きな負担・ストレスを強いる外科手術を避けられる猫の不妊プログラムの確立が期待できるのではないだろうか。

非外科的不妊プログラムの確立によって、母体へのストレス、受胎数を減らし、里親探しや殺処分に掛かる費用を削減できれば、次回(未来)の不妊プログラムを強化・拡大していけるのではないでしょうか。

 

参考ページ:

http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1098612X18758549?journalCode=jfma


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