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犬のカリシウイルス感染症~イタリアにおけるサポウイルスに関する疫学的調査~

投稿者:武井 昭紘

サポウイルス(canine sapoviruses、SaVs)は、ヒトに食中毒を起こし、嘔吐・下痢を伴う胃腸炎を呈する病原体であるのだが、症状のみではノロウイルスとの鑑別が難しいとされている。また、近年、このSaVsを犬から検出したとの報告もあり、小動物臨床における当該感染症の詳細を調べることが、防疫対策(公衆衛生)の側面から非常に大きな意味を持ち始めていると思われる。

そこで、イタリアの大学らは、500匹を超える犬から血液を採取し、SaVsに対する抗体(IgG)の有無に関して研究を行った。なお、同大学らによると、全供試犬の40%以上がIgGを有しており、加齢(特に4歳齢以上)に併せるように、抗体保有率は増加するとのことである。

上記の事項とともに、SaVsは、カリシウイルスの仲間(猫カリシウイルスは、ワクチン接種が一般的となる程に重要な病原体)で、消化器症状を認める幼若犬からも検出されることを念頭に置くと、獣医療における嘔吐・下痢の鑑別診断リストを更新する必要があるかも知れない。

加えて、今後、SaVs感染症の疫学の全容解明を試みることが、食中毒や集団感染の発生を抑え込み、「ヒトも救える獣医学」の一つとして進展していくことを願っている。

犬のワクチンプログラムに

SaVsが世界各地に存在しているとしたら、犬のワクチンプログラムにSaVs感染症が追加される日が訪れることも否定できないのではないでしょうか。

 

参考ページ:

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168170218301059#!


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