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腫瘍性疾患に伴う腹腔内出血に対する輸血療法の「可能性」を検証した研究

投稿者:武井 昭紘

血管や脾臓など、健康な個体においても豊富な血液が確保されている組織に腫瘍が発生した場合、大量出血によって致死的経過を辿るリスクが高まってしまう。そのため、失った血液量に従い、輸血療法が検討されるのだが、小動物臨床には、日本全土をカバーできる血液バンクは存在しない(世界各国でも同様)。

そこで、テキサスA&M大学は、脾臓の血管肉腫を想定して、ある検証を行なった。同検証は、血管肉腫由来の腫瘍細胞を健康な犬に投与して、血液から腫瘍細胞のみを回収する試みであった(本来は白血球数を調整するためのフィルターを用いている)。

検証の結果、大学によると、フィルターを通した血液からは腫瘍細胞が検出されず、血液成分と腫瘍細胞の分離ができるという見解を得たとのことである。

上記のことから、紹介した研究の臨床応用には、期待が持てると思われる。つまり、悪性腫瘍の進行に伴って、血管外(腹腔内)に出てしまった血液を集めて、疾患の原因となる細胞を除去して自己輸血に利用する獣医療が確立できると仮説を立ててみるのも、一つの研究分野となるのではないだろうか。

将来的に、腫瘍性疾患に起因した失血死を経験する犬およびペットオーナーが激減することを願っています。

将来的に、腫瘍性疾患に起因した失血死を経験する犬およびペットオーナーが激減することを願っています。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/29247544/?i=17&from=dog


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