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犬の口腔内に発生した「世界初」の腫瘍性疾患に関するケースリポート

投稿者:武井 昭紘

生体において随所に発生する腫瘍細胞の大半は、その場所で分化した正常な細胞の癌化に起因している。つまり、皮膚の腫瘍であれば皮膚を構成している細胞が、骨の腫瘍であれば骨を生成・破壊している細胞が、生命維持に必要な量を遥かに超えて増殖するということである。しかし、奇形腫や異所性腫瘍に代表されるように、病変部位周囲の解剖・組織学からは類推することが難しい腫瘍性疾患も起き得ることが知られており、腫瘍細胞の種類の特定について、盲目的な先入観(胚葉由来や理論のみで捉えること)に影響されないように、検査・診断を進めることが重要である。

このような背景の中、昨年11月、韓国のソウル大学校は、世界初となる犬の口腔内腫瘍を発表した。論文によると、2品種(2匹)の口腔内に認められた腫瘍は、病理学的に「皮脂腺」が由来となっているとのことで、文字通り、口腔内の粘膜ではない、皮膚に分布しているはずの腺組織である。

上記のことから、既存の腫瘍学や過去の報告のみを基準(EBMで参照する論文の中にも誰かが世界で初めて報告したから認められたものがある)に、臨床現場で遭遇する全ての担癌動物を振り分けることは出来ないかも知れないという意識を持ちながら、診療業務にあたることが望ましいのてはないだろうか。

現在担当している動物に、由来不明の腫瘍細胞があるとしたら、「世界初」の腫瘍性疾患かも知れません。

現在担当している動物に、由来不明の腫瘍細胞があるとしたら、「世界初」の腫瘍性疾患かも知れません。

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/29169626


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