犬糸状虫(フィラリア)は、蚊が媒介するため、寒冷地域での拡大は起こりにくいと考えられている。事実、この病原体が確認されている最北端は、フィンランドの南、エストニア共和国であるとされてきた。しかし、昨年11月、ヘンルシンキ大学らによって、フィラリアの世界的な北上を示唆する調査結果が発表され、既存の学説が覆えされる可能性が出てきてしまった(経緯は以下に示す)。
それは、フィンランド国内の女性がフィラリアの一種、Dirofilaria repens(D.repens)に感染していると発覚することから始まる。
次いで、①フィンランド南端と緯度が近似しているサンクト・ペテルブルク、②フィンランド国境に極めて近いビボルグよりフィンランドに輸入された犬(計2例)から、D.repensが検出されてしまった。
つまり、①②の意味する所は、「フィンランド南部付近におけるD.repensの増殖」と言えるのではないだろうか。また、仮に、フィラリアが更なる北上を続けるのであれば、北欧3国の全域に拡大することも懸念される。
加えて、昨年の大型台風、今年の日本海側での積雪など、「観測史上初」といった表現を毎年のように耳にする事態を考慮すると、気候とフィラリアに関する「今までの疫学」は、根底から見直した方が良いのかも知れない。
参考ページ:
https://parasitesandvectors.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13071-017-2499-4