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てんかん治療中の犬が呈した症状から疑われたリンパ腫の実態

投稿者:武井 昭紘

犬猫のリンパ腫は、全身リンパ節の腫脹をキッカケに発見されることがあり、その後に、多様な症状を呈して、致死的経過を辿る血液系(腫瘍性)疾患である。また、リンパ腫に類似した臨床症状を認める病気として、猫の「偽リンパ腫」が知られており、直接的な死因とはならないリンパ節の腫れが特徴であるため、リンパ腫との鑑別が重要であるとされている(犬での偽リンパ腫の報告は無い)。

今年9月、前述のような偽リンパ腫に関して、イリノイ大学とカナダの動物病院が新たな見解を示した。大学らは、犬の偽リンパ腫を疑う症例を経験したとのことで、以下のような特徴を発表している。

◆犬の偽リンパ腫を疑う症例の特徴◆
1.2.5歳齢の去勢オス(シェパードの血をひく雑種)
2.レベチラセタムおよびフェノバルビタールによる「てんかん」の治療中の発症(両薬剤の血中濃度は治療域)
3.運動失調症、発熱、倦怠感などの臨床症状が3日間に渡り継続
4.全身の体表リンパ節の腫脹、脾腫、肝腫(病理検査では悪性所見なし)
5.ゾニサミドに変更すると症状が改善する

上記のことから、一部の「てんかん」治療薬によって、犬に偽リンパ腫が起きることが推測できる。また、今後は、「てんかん」に限らず、投薬全般に伴う犬の偽リンパ腫(薬物性偽リンパ腫)の発症メカニズムを解明することが急務の課題であると考えられる。

日本の小動物臨床においても、犬の薬物療法をキッカケとしたリンパ節の腫脹を診察した際には、薬物性偽リンパ腫の可能性を検討してみても良いかも知れません。

日本の小動物臨床においても、犬の薬物療法をキッカケとしたリンパ節の腫脹を診察した際には、薬物性偽リンパ腫の可能性を検討してみても良いかも知れません。

 

参考ページ:

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.14818/abstract;jsessionid=B1876D8D54A4CDA6295115424088113F.f04t01


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