人医療では、「てんかん」の神経症状に類似した病状を呈する稀な遺伝性疾患として、ラフォラ病(Lafora disease、LD)が知られており、日本の人口1億2000万人に対して数千人の患者がいると推計されている。また、犬のLDも稀であるが確認されており、EPM2Bという遺伝子の突然変異(常染色体劣性遺伝)を伴うグリコーゲンの細胞内蓄積が発症要因となっているが、特徴的な症状(LDを疑うキッカケとなる臨床症状)が明確となっていない。
そこで、イギリスのサリー大学は、犬のLDで多くみられる症状に関する研究を行った。同研究では、LDの有病率が高いワイヤーヘアード・ダックス・フンドが対象となり、変異遺伝子の検出によりLDと診断された犬16匹およびLDを疑われた犬11匹(遺伝子検査をしていない)の計27匹が参加しており、①病気が発見された時と②発見から1~3年経過後の症状が集計された。すると、14種類の典型的な症状が確認され、①の時点では無刺激または刺激に反応したミオクローヌス(体の一部が小刻みに動く)が、②の時点では上記のミオクローヌス、入眠時のミオクローヌス、全身性発作の3つが、全症例の70%以上で認められることが明らかとなった。
このような犬のLDは、病状が進行すると、ペットオーナーと罹患犬のQOLを大きく低下させる経過(認知症、失明、難聴、攻撃性の増加、不適切な排便・排尿)を辿ってしまう。そして、原因不明の状況のまま、列挙した症状を愛犬が抱えた場合には、オーナーの不安感は莫大なものとなることが予測できる。
1日でも長く、平穏なペットライフを過ごしてもらうために、珍しい病気であるLDを「てんかん」と誤診しない「一般的な」知識として、今回紹介した研究が広く知れ渡ることを願いたい。
参考ページ:
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0182024