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犬の急性腎障害の確定診断および予後判定を可能とするバイオマーカー

投稿者:武井 昭紘

犬の急性腎障害(acute kidney injury、AKI)は、早期発見・早期治療が腎臓の機能維持および回復のために非常に重要であるとされている。しかし、AKIを早期に発見するマーカーの確立はされておらず、実際の症例に対して、新卒者を含めて全ての獣医師が迅速な対応をとれる訳ではないという現状にある(「腎不全」を早期発見する検査法は存在しているが、急性と慢性の区別は困難である)。

そこで、イスラエルのヘブライ大学は、尿中のヒートショックプロテイン72(urinary heat shock protein-72、uHSP72)と犬のAKIの関連性について研究を行った。同研究には、泌尿器疾患を抱えた犬および対照犬53例が参加しており、5つのグループ(以下に記載する)に分類され、uHSP72と尿中クレアチニンの比率(uHSP72 / uCr)が測定されている。

◆泌尿器系疾患に罹患した犬と対照犬53例のグループ分け◆
①臨床上健康な犬:11例
②尿路感染:10例
③慢性腎臓病(CKD):11例
④CKDが急激に悪化した症例:8例
⑤AKI:13例

 

研究の結果、5グループのうち、⑤において、uHSP72 / uCrの数値が最も高い(有意差あり)ことが明らかとなった。さらに、⑤の中でも、斃死例のuHSP72 / uCrは、一命をとりとめる症例に比較して、有意に高値を示すことも判明した。こののことから、犬のAKIの早期診断および予後判定において、uHSP72 / uCrの測定が有用であることが考えられる。また、同大学はカットオフ値(0.20 ng/mg)を設定しており、測定方法が世界各地に普及すれば、uHSP72 / uCrは再現性の高い検査となることも推測できる。

今後、今回の研究に用いられたバイオマーカー(uHSP72 / uCr)が、中~大規模の臨床研究を経て、日本の小動物臨床にも応用されることに期待したい。

uHSP72 / uCrが既存の「腎不全」のマーカーと使い分けられて、犬の腎臓疾患の治療成績が、より一層安定することを願っております。

uHSP72 / uCrが既存の「腎不全」のマーカーと使い分けられて、犬の腎臓疾患の治療成績が、より一層安定することを願っております。

 

参考ページ:

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1090023317300862?via%3Dihub


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