以前にアップした記事の通り、獣医師とペットオーナーによる犬の体重・体型評価には「感覚のズレ」が存在しているため、獣医師が診察対象の犬が過体重または肥満であると判断したとしても、オーナーが理解できないという状況が起き得ることがある(9段階BCSの約1段階の差生じている)。そのため、客観性が保たれた数値化(血液検査に相当するようなもの)によって、犬の体重および体型を表現する手法が必要であると考えられる。
そこで、ウプサラにあるスウェーデン農業科学大学は、①痩せ型から標準体型(9段階評価のBCSで4~5)の犬と②過体重(BCS6~8)の犬における尿中成分の解析を行った。同研究には、28匹の犬が参加しており、①に該当するものが12匹、②が16匹であった。また、それぞれの犬から、空腹時(食べられる物が無い状態で一晩を過ごした翌朝)と高脂肪食を与えた3時間後の尿を採取し、検体の成分分析に高い有用性を誇る核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)を実施して、分散分析(analysis of variance、ANOVA)により統計学的処理が進められた。その結果、食後の尿において、①に比較して、②では有意なタウリン濃度の低下およびアラントイン濃度の上昇が認められた。
上記のことから、同大学は、特に尿中タウリン濃度の変動は脂質代謝の変化に深く関与していると仮説を立てており、更なる研究を行うこととしている。今後、尿検査(尿中タウリン濃度)を用いた評価法が確立されれば、獣医師およびペットオーナー両者の「主観を完全に排除した」犬の体重・体型の判断基準が設定されるかも知れない。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5491113/