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猫の注射部位肉腫における術式を改善する研究がスタート~疼痛を最少限化するために~

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床において、犬の症例に比較して、「猫」への対応に深く悩まされることは珍しいことではなく、猫の注射部位肉腫(feline injection site sarcoma、FISS)も一つの例である。FISSは、ワクチンなどを注射した部位が、時間を経て癌化するという現象であり、外科手術適応となれば、大きなマージンが必要とされており、一部のガイドラインでは5cmを要すると表記されているものもある。しかし、充分なマージンのために、正常組織を広範囲に切除することは、非常に強い疼痛を罹患猫に与えるというデメリットが発生してしまう。

そこで、アメリカのオレゴン州立大学は、FISSの術式を見直すことに挑戦することを発表した。今回紹介する挑戦のスタートとなる研究には、5匹のFISS症例が参加しており、3.5~5.5cmのマージンを段階的に設定して、外科手術が適応されている。その結果、数センチ(2~3cm)のマージンは不適切であるが、「適正なマージンは5センチを超えることはない」という結論を得たとのことである。

上記の挑戦は始まったばかりであるため、今後は、5cm「未満」の最適なマージンを具体化(数値化)することが目標となるはずである。将来的には、臨床研究データを蓄積して、猫のFISSにおける「必要最低限の疼痛}で完結する術式が確立されることに期待したい。

疼痛を最少限にするための研究が、腫瘍に限定されることなく、様々な疾患で、盛んに実施されることを願っております。

疼痛を最少限にするための研究が、腫瘍に限定されることなく、様々な疾患で、盛んに実施されることを願っております。

 

参考ページ:

http://oregonstate.edu/ua/ncs/archives/2017/jun/study-sheds-light-determining-surgical-margins-feline-tumors


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