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ラブラドール・レトリーバーの銅蓄積性肝炎の進行度は遺伝子検査で判別ができる

投稿者:武井 昭紘

ラブラドール・レトリーバーの肝炎は珍しくない病気であり、肝臓に銅(Cu)が蓄積されることが一つの原因とされている。蓄積されたCuは、活性酸素種(ROS)の増加を誘導し、酸化ストレスに伴うDNA損傷および脂質の過酸化を引き起こすことで、慢性肝炎(最終的に肝硬変)を発症させる。また、ラブラドール・レトリーバーを含めた犬の銅蓄積性肝炎は遺伝性(家族性)とされているが、遺伝子の発現と病態の進行度の関連については明らかにされていない。

そこで、オランダのユトレヒト大学は、銅蓄積性肝炎の研究プログラムに参加した臨床上健康なラブラドール・レトリーバー31頭を対象にして、肝組織のCu含有量、同組織の病理組織学的変化および遺伝子の発現レベルの関連について調査をした。犬の肝組織は、トゥルーカット生検(14G針)で採取され、多元素の同時分析を可能とする機器中性子放射化分析(Instrumental Neutron Activation Analysis、INAA)によるCu含有量の定量化、銅染色(ルベアン酸染色)による病理組織検査、RT-PCRによるmRNAの検出に用いられた。なお、Cu含有量は、1kgの肝組織(乾燥重量)当たり400mg未満を基準値とし、正常組織として10頭のビーグルの肝組織が用意された。そして、31頭のラブラドール・レトリーバーは以下の4つのグループに分類された。

◆ラブラドールの肝組織の病理学・遺伝子学・Cu含有量による分類◆

・control group:Cu含有量が基準値内かつ正常な肝組織
・high copper group (HC):Cu含有量が高値かつ正常な肝組織
・high copper hepatitis group (HCH):Cu含有量が高値かつ病理組織学的に肝炎が始まっている
・high copper chronic hepatitis group (HCCH):Cu含有量が高値かつ病理組織学的に「慢性」肝炎に陥っている

研究の結果、4つのグループでは、遺伝子(mRNA)の発現が異なっていることが判明した(参考ページのFig.3をご参照下さい)。このことから、今後は、遺伝子検査によるラブラドール・レトリーバーの銅蓄積性肝炎の詳細な病態把握と、それに基づく早期診断・早期治療を実現するために、診断ガイドラインを作成することが重要であると考えられる。また、ラブラドール・レトリーバー以外の犬種の肝炎でも、同様の分類が適応できるかについて研究が進むことに期待したい。

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今回の研究から、遺伝子発現をコントロールすることで銅蓄積性肝炎の病態の進行を遅らせる治療方法が開発されるかも知れません。

 

参考ページ:

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0176826


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