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ヒトの狂犬病の感染・発症を制御するのは獣医師であるという統計学的分析を実証するプログラム

投稿者:武井 昭紘

狂犬病は、ヒトが発症すると99%(約100%)の確率で死亡する非常に危険な感染症であり、世界では年間55000人が犠牲となっている。その中で、アジア・アフリカにおける狂犬病の感染原因の99%は「犬に咬まれる」ことであるとされている。そこで、MSDアニマルヘルス社およびメルクアニマルヘルス社は、ヒトの狂犬病を制御するための公衆衛生プログラムを発足させることとした。

上記のプログラムは、狂犬病に感染するリスクのあるヒトに予防接種をしたり、狂犬病を発症したヒトの治療をすることは行われず、「犬を対象としている」ことが特徴である。これは、多くのヒトが狂犬病を発症する地域では、犬の狂犬病ワクチン接種率が低いという考え方に基づいており、犬の狂犬病ワクチン接種率を引き上げることでヒトの狂犬病の発生を抑えることを目的としている。

同プログラムでは、初めに、アフリカのタンザニア(赤道に近くインド洋に接している連合共和国)で検証が行われ、タンザニアの犬に狂犬病ワクチンを接種することが進められた。すると、飼育頭数の64%にワクチン接種を行うことで、犬の狂犬病を制御できるという調査結果を得ることが出来たとのことである。また、この調査を基に統計学的解析をしたデータでは、タンザニアおけるワクチン接種率が70%に達することができれば、当該地域のヒトの狂犬病を抑止できるという試算が示された。

今後は、2社の企業が提唱した公衆衛生プログラムに、世界保健機構(World Health Organization、WHO)、国際獣疫事務局(World Organization for Animal Health)、国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations、FAO)、狂犬病予防連盟(Global Alliance for Rabies Control)が加わることで、2030年までにプログラム参加国からの狂犬病(ヒトおよび犬)の排除を完了させることが目標であると発表された。

ヒトの狂犬病への対策として、狂犬病ワクチンの曝露前接種または曝露後接種という方法が取られているが、発展途上国では経済的な問題が壁となり、ヒトの狂犬病の発生を減少させることができない現状がある。今回紹介したプログラムが成功するれば、犬に狂犬病ワクチンを接種するだけとなるため、費用対効果が改善され、犬およびヒトの感染症を同時にコントロールすることが実現することになる。つまり、犬に狂犬病ワクチンを接種することが、ヒトの感染症(狂犬病)対策に非常に大きな効力を発揮すると考えれるため、獣医師の果たすべき役割は重要であると思われる。

小動物の予防医療が、ヒトの予防医療に深く関わっていることがありますので、獣医師の役割・存在は非常に重要なのだと思います。

小動物の予防医療が、ヒトの予防医療に深く関わっていることがありますので、獣医師の役割・存在は非常に重要なのだと思います。

 

参考ページ:

http://www.veterinarypracticenews.com/study-universal-canine-vaccination-eliminates-human-exposure-to-rabies/


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