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Zoetis社の犬糸状虫駆除薬がFDAに承認される

投稿者:武井 昭紘

2月末となり、そろそろ3月に入る。この時期の動物病院は、春の予防時期に向けて様々な準備(ダイレクトメールの送付、キャンペーンポスターの作成、予防注射薬および予防薬の仕入れなど)をすることが多くなる。その中で、「フィラリア予防薬の処方」は売り上げの大きな割合をしめることになるため、重要な業務の一つとなる。しかし、フィラリア抗原検査が陽性と判明した犬には、フィラリア予防薬の処方には慎重な対応を求められることになる(インフォームドコンセント・チョイス、処方薬の選択、手術の提案など)。

しかし、現在、日本ではフィラリア駆除薬の入手は困難で、既存のフィラリア予防薬でフィラリア成虫に影響の少ない製品(レボリューションなど)を使用して成虫が寿命を迎えるのを待つか、フィラリア成虫の摘出手術のどちらかを選択することになる。この状況は、海外でも同様で、アメリカ国内でもフィラリア駆除薬であるメラルソミン二塩酸塩を入手することが難しくなっている(流通している絶対数が少ない)。そこで、Zoetis社はアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得て、メラルソミン二塩酸塩を販売することにした。

Zoetis社のメラルソミン二塩酸塩は、DIROBANという商品名でリリースされることが発表されており、クラス4(Caval syndrome)の症例を除く犬糸状虫症のクラス1(無症状または発咳のみ)からクラス3(重症例)まで安全に使用ができるとしている。また、2-dose protocolで約90%、3-dose protocolで99%の駆除率を達成できることを謳っている。

フィラリア成虫の積極的な駆除に関しては、賛否が分かれるところではあるが、「ペットオーナーに提示できる選択肢が増える」という意味においては、DIROBANの流通に動いたZoetis社の決定は素晴らしいことではないだろうか。そして、メラルソミン二塩酸塩に限らず、他の製薬メーカーも流通量の少ない薬剤の販売に乗り出すことがあれば、臨床現場での「治療の幅」が広がることが期待できる。

Zoetis社の足りないものを補う姿勢は、獣医療のレベルを維持・発展させるために必要だと思います。

Zoetis社の足りないものを補う姿勢は、獣医療のレベルを維持・発展させるために必要だと思います。

 

参考ページ:

http://www.veterinarypracticenews.com/zoetis-receives-fda-approval-for-heartworm-disease-treatment/

https://www.zoetisus.com/products/dogs/diroban/index.aspx


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